研究も現場志向で -「ケアの意味を見つめる事例研究」の紹介-

 

「渡辺式」家族看護研究会では、①「渡辺式」分析シートを使っての事例検討と、②事例研究の方法として「ケアの意味を見つめる事例研究」を紹介し、現場志向の看護を皆で一緒に学び、考えています。

研究も現場志向で -「ケアの意味を見つめる事例研究」の紹介-

 

看護は臨床で繰り広げられている…実験室や研究室で行われているわけではない。

その考えに基づいて、家族が絡む‘場面’を切って「まさにその場で起きていること」を深く理解し解決をめざす事例検討の方法論が「渡辺式」です。

同じように、看護の「知」は現場で生まれている…それを見える化することで、未来の看護実践のヒントにしていこうする事例研究の方法論が「ケアの意味を見つめる事例研究(Case study to focus on the Meaning of Care,以下CMCと略す)」です。

 

CMCの特徴は、以下の3点です。

1.実践者の「生の経験」をデータとし、分析過程でキャッチコピーを活用することで、アブダクションを働かせ実践の意味のまとまりをとらえる。

→実践者と共同研究者の「問われ語り」によって実践の解釈が進み、‘言葉のついていない経験’に言葉をつけることが可能になる。

 

2.「大見出し」「小見出し」を用いて、実践の「意味・意図」と「コツ」をセットで表わすことによって、読者に提供したいヒントの方向性をある程度統制している。

→その「大見出し」「小見出し」で、困難や課題を突破・対応するのに「こんなやり方があった」「こんな意図で実践は生まれた」「実践はこんな意味を持った」を伝える。

 

3.論文記述では、現場の状況が読者に想起されて、読者がその場面に棲みつけるように、状況の記述に臨場感を持たせる。

→状況が想像できると、「あるある」または「そんなことがあるのか」「もしその場にいたら自分は…」等と突き付けられ、続いて1つの答えが示されることで、読者それぞれが自分に引き寄せてヒントを得られる。

 

看護は、実践者が状況に応じて創造するものなので、実践者自身に内在化された(腑に落ちている)「知」が必要と思われます。CMCは、実践知を次世代に伝承することに役立つ研究方法になりえると考えています(今も発展途上ですが)。

「渡辺式」事例検討に慣れている方なら、CMCとも仲良くなれるはずです。心に残る実践を研究としてまとめてみたいときには、CMCを思い出してください。

 

文責:柄澤清美(CMC開発メンバー)