「渡辺式」とは、看護において直面する患者とその家族に生じている問題を、構造化して理解するためのアセスメントモデル。

「渡辺式」家族看護研究会って?

「渡辺式」家族看護研究会とは、「渡辺式」家族看護アセスメント/支援モデルを用いた事例検討会や交流会を通じて、家族看護に関わるアセスメントや援助のスキルを高め、参加する人々が互いにエンパワメントされる場です。  参加条件は、特にありません。「面白そう」「興味ある」「やりたい!」「学びたい」と思う方はどなたでも参加いただき、皆でワイワイとディスカッションしましょう!

 

私たちの事例検討でのスタンス

①援助に行き詰った時には、いったい何が起こっているのか、ちょっと一息入れて全体を俯瞰して眺めてみませんか?何か気づきがあるかも。
②相手を変えることはできないけれど、自分が変われば、それに影響されて相手が、そして全体が動き出していくかも知れない。
③患者さんも家族も、援者も元気になれる方策、つまりtriple-winを考えていきましょう!そこにきっと、家族の力を引き出す方策がある!

そして事例検討会では「どのような発言もOK。自由で安全な場」を保証しています。 「渡辺式」家族看護研究会は、事例検討会や交流会を通じて、 気づく、わかる、癒される。視野が広がり合点がいく。仲間ができて元気になる。まさに、参加者の皆さんに笑顔をもたらす場所です。

 

さて、長年「渡辺式」家族看護研究会は活動してきましたが、これまでは組織化されたものではなく、言わば仲間内の研究会の様相でした。2018年春から公開の事例検討会を始め、夏の日本家族看護学会での活動意識の高まりを契機に、研究会の組織化の必要性が話され、正式に全国展開をしていくことが決定されました。その一環がこのホームページで、今後様々な情報を発信していきます。

 

まずこの研究会の名称について説明します。以前は<渡辺式家族看護研究会>でしたが、新しい名称は<「渡辺式」家族看護研究会>、通称「渡辺式」となります。「渡辺式」とカッコがついているのは、独立商標として取り扱うためです。言うなれば、この研究会名称は特定の人・場所・理論/概念を表すものではなく、≪全ては現場のために、すべては人々(患者・家族)のために尽くす≫という、現場志向性と実践重視の姿勢に依拠したものになっています。

また「渡辺式」は、<「渡辺式」家族看護アセスメント/支援モデル>を持っており、この「渡辺式」の家族看護モデルを使用しながら、家族看護研究会活動を行っていきます。

 

「渡辺式」家族看護アセスメント/支援モデルの歴史:それは困りごと相談から始まった

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「渡辺式」家族看護研究会はどんな所?:皆でワイワイ議論するところ

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専門知としての「渡辺式」家族アセスメント/支援モデル

ここでは、「渡辺式」家族アセスメント/支援モデルに含まれる思考や概念、使うスキルについて述べていきます。

1. 「渡辺式」家族アセスメント/支援モデルとは、家族が絡む‘場面’を切るものである

「渡辺式」は、わが国で様々に紹介されている家族看護モデルの中の1つですが、他の家族看護モデルと大きく異なるのは分析手法が「事例分析」ではなく「事象分析」を行っていくことにあります。つまり‘家族を切る’ではなく、家族が絡む‘場面を切る’ということです。通常の家族看護の事例分析は、複雑さや不可解さ、特異性があって、関りの困難性が生じた時に、家族を客体化して分析するものです。 一方の「渡辺式」は、そもそもの考え方として<家族の言動は医療者/支援者の影響を受けての反応である>と捉えます。たとえばクレームを言う家族は、言わずにはいられない状況があって、医療者/支援者との相互作用の中で感情が激化した状況、と考えます。ですから、困難さや複雑さの‘場面’を構成する当事者として、患者・家族メンバーと共に、医療者/支援者も設定します。こうして医療者/支援者も含めた当事者を分析対象者とするところに、「渡辺式」の特徴があります。 この‘場面’を構成している全ての対象(細部)を切っていく思考は、‘システム思考’であり、今流行の‘メタ認知=空間と時間を俯瞰して見通す’とも言えます。 これらについては下記で、通常の看護のアセスメントと比較しつつ述べていきます。

2. 「渡辺式」は看護師に特化した方法論で家族看護と言えないのでは?の疑問に答えて

「渡辺式」に対する疑問として、関わりのむずかしい家族やクレームの家族など、看護師の困りごとを解決するための分析手法だけど、家族看護の基本的なアセスメント項目が網羅されていないので、教育的に使えるものではないのではないか?があります。また、家族看護全般というより現場の看護師の相談(コンサルテーション)のための道具であり、どちらかというと、家族の事象に対応するマニアックな方法論なのでは?という意見もあります。 これらの疑問や意見に対しては、『そうなんです。その通り!』と『ちょっと誤解されているかも』があります。肯定と反論の2つの側面からコメントします。

  1. 「渡辺式」はそもそも、現場で家族と関わる中で困惑し、疲弊し、時に傷ついた看護師の相談ごとを受けていた渡辺が、「ちょっと待って、整理して考えてみましょう」と紙を広げて、一緒に書き出していったところに出発点があります。ですから、「渡辺式」は看護師の困りごとを解決するための分析手法であり、最初から現場志向で、家族看護学の学術的なモデル開発や方法論を目指してのものではありませんでした。
  2. 「渡辺式」は現場の現実から出発しています。悩む看護師たちの根底にあったのは、患者に良いケアをしたい、家族の力になりたいでした。しかし現実は「なんでこうなるの?」と思うほど、状況がもつれて絡み合い混乱していました。混乱しもつれた状況を「渡辺式」で分析しながら、整理していった時、看護師は「ああそういうことか」と晴れやかな表情になったのです。このように看護師がエンパワメントされ家族像が描ければ、自ずと家族看護は実践されていきます。いうなれば「渡辺式」は看護師のコンサルテーションの道具であり、また自分の実践を自己分析する道具でもあります。これは家族看護実践のための<間接的道具>と位置付けられます。
  3. さてエンパワメントされた看護師が、患者・家族に向き合っていく時、起きている状況を大づかみにパターン把握するのに、<「渡辺式」家族-看護師パターン10>と<「渡辺式」家族関係パターン7>が役立ちます。また、患者・家族を前にして相談する時(たとえば意思決定支援など)<「渡辺式」人間関係分析シート>を広げると良いでしょう。「渡辺式」は、家族看護実践の<直接的道具>でもあるのです。
  4. 「渡辺式」は基本的な家族アセスメント項目が網羅されていない、つまり家族の構造・機能・発達の項目が明確でない、との意見があります。実は「渡辺式」は初学者が教科書的に学ぶもの、あるいは入院時の初対面家族の情報を整理するためのものではありません。あくまで、「Here and Now」の現場で起きている事象に関して、解決を目指すために開発されたものです。現場では「明日患者・家族にどう声をかけ、アプローチしていくか」の計画の迅速さが求められます。言いかえれば、家族情報が一度に網羅される必要はないので、必須情報だけを提示しているのです。「渡辺式」では、家族がもつ信念やパワーバランス、歴史などは「背景」の項目に記入していきます。科学性とは、仮説を立てて検証していくことです。「渡辺式」はシンプルさと迅速さをもって、仮説検証を連続的に繰り返していく方法(臨床推論法)をとりますので、科学性は担保されています。

3. 通常の臨床/在宅の「看護」と「家族看護」のアセスメントのちがい、および「渡辺式」の方法のちがい

医療機関や在宅等で行われる通常の「看護」は、個人(患者/クライエント/利用者)をとらえ、その社会的背景/資源として家族を見つつ、同時に暮らしの場としての地域や社会環境をとらえていきます。個人を包括的に理解するうえで、家族の状況や職業、信念など様々な情報を得て、その情報をつないで全体像をえがき、看護を展開していきます。 「家族看護」は個々の家族メンバーをとらえ(家族構成と役割機能)、その家族を1つのまとまり(=家族システム)としてメンバー間の相互作用や家族がもつ価値/信念、家族発達をとらえます。そして家族を取り巻く社会的なシステム(=医療システム、在宅ケアシステム、学校、地域社会など)と、家族システムがどのような相互作用/交互作用をしているかをアセスメントしていきます。こうして家族看護の事例分析は、家族(システム)の分析から、エコマップを書いて社会システムとの関係を一般化して見ていきます。 一方「渡辺式」は今起きていることに注目しますので、社会システムという大枠を、医療チームや在宅チームなどに絞り込みます。そして、家族システムと医療/在宅ケアシステムを並べて、ちょうど鳥の目線で見おろす様にして、①家族と医療/在宅の2つのシステムの間に起きていること、②家族システム内でおきていること、③医療/在宅システム内でおきていること、の3視点方向から状況を分析していきます。

ここで述べた、鳥の目線で見おろす様にして状況を分析する方法が、「俯瞰する」ということであり、①②③のようにして、順序を追って細部状況から全体を、全体状況から細部を考えていくことが「システム思考」です。①②③の相互作用を見るとそこには良循環と悪循環が見えてきますが、看護が注目するのは「悪循環」です。また分析結果はあくまで仮のもの=「仮説」であるという自覚をもって、確認するための「対話:ダイアログ」を続ける方法をとりながら、自分自身(看護師)が相手(患者・家族)の捉え方を変化させ、同時に家族メンバー同士が互いの見方を変化させます。この捉え方/見え方の変化を「リフレーミング」をはかると言いますが、こうした様々な手法を使って実践していくのが、「渡辺式」の方法論なのです。

「渡辺式」家族看護見える化シートとシート使用に関して

「渡辺式」家族看護見える化シートは、《「渡辺式」シートⅠ:事例情報シート》と《「渡辺式」シートⅡ: 人間関係「見える化シート》《「渡辺式」シートⅢ:支援方策、実施、評価シート》の3部作で、用途に合わせて、どこからでも記入が開始できる仕組みになっています。用途は下記となります。

☆事例検討会・カンファレンス(シートⅠ, シートⅡ, )

☆コンサルテーション(シートⅠ, シートⅡ)

☆個人での振り返り/事例研究/事例レポート(シートⅠ, シートⅡ, シートⅢ)

この「渡辺式」家族看護見える化シートはどなたでも自由に使えます。シートは印刷して、自由にお使いください。また使用しての事例分析に関するご質問やご意見は、「渡辺式」家族看護研究会までお寄せください。